悪しき「指導者」をどうするか
近頃の韓国政府の日本に対する最近の言動はとち狂っていて常軌を逸しているとしかいいようない。
大統領の頭がおかしいのならせめて国民の多くが頭を冷やし国を損ないかねぬ指導者をみずからの手で淘汰しないと韓国は孤立のまま北朝鮮に併合され共産化されてしまい国民は悲惨な思いをするでしょう。
国の運命をきめるのは一部の政治家ではなしにあくまでも国民の意思に違いない。
韓国の友人たちの覚醒を願ってこの文をしたためました。
悪しき「指導者」をどうするか
最近の韓国の文在寅大統領政権のわが国に対する無礼非道なやりくちに内外に批判の声も高まり、彼の支持率も降下してきていると聞くが、それに関する論評の中でなぜかごく重要な要因が欠落しているような気がする。
≪権威に弱い彼等の国民性≫
それは文が熱願する南北の統一が実現した時、一番立つ瀬がなくなるのは韓国の国軍だということだ。現に軍の高官のOBたちの中に文批判の声が高まりつつあるという報道は注目に値する。戦後、独立後の韓国の政治の経過を見直すと政変にはいつも軍の強い関与があった。
最初の李承晩大統領を倒し、その後を継いだのは近代化に大きな功績を残した軍人の朴正煕大統領だったし、彼は側近の軍人に殺され、軍人の全斗煥大統領が後を継いだ。そして一部左翼が反政府の動きを示したのを、全は軍を出動させて鎮圧したのが光州事件だった。
私はそれを全て良しとはしないが韓国の国民の好む権威主義のメンタリティーからすれば妥当な成り行きと言える。
概して権威に弱い彼等の国民性はいつもそれをさしたる抵抗なしに受け入れてきた。そうした国民性は財閥をも絶対化したし、健全な民主主義の定着を阻害してもきたと思われる。
朝鮮半島に似たフリンジと呼ばれる世界の大きな他の半島、バルカン半島、インドシナ半島などは地政学的にも背後の大国に抑圧支配され続け、分裂国家を強いられるという悲劇的な歴史をたどってきたが、朝鮮もまた清国の滅亡の後、ロシアの南下を恐れ日本との併合を自ら選んだのだ。
そうした歴史の経過の中で培われた民族の精神構造は自主性を欠き権威に弱い卑屈なものになりやすく、優位なものになびく真の自立性を欠いた卑弱なものになりやすい。現代の韓国における財閥の過大な権威もその証左であって国民の卑屈さを表している。
それは彼等の祖先が主体的に選んだ日韓併合を被害として捉える歴史の改竄を自ら行い、日本の道義的責任として非難する卑怯な主張を繰り返しているが、冷静な第三国の識者はその著書で日韓併合を『朝鮮が瞬間的に幸福になった時代』と称して評価しているが。
≪いかに国家国民を守り保つか≫
現にかつて私が親しく会談した折、朴正煕大統領は、貧農の倅だった自分に勉強の機会を与えてくれたのは日本の統治による教育の普遍だったし、自分を軍人に育て正式に士官学校に編入し首席になった自分に答辞まで読ませたのは異例の植民支配とも言えると回顧していたものだ。
日本もまた遠い過去には半島を介して多くの文化を取り入れてきた事を忘れることは出来ない。そうした歴史の推移にかまけて両国の優劣を云々するのは歴史の真実を歪め現実を傷つけ損なう愚かな所作でしかあるまい。
今私たちが心得、腐心して防がなくてはならぬのは、間近な隣の朝鮮半島が北にのみ込まれ共産化されるのをいかに防ぐかという事に他なるまい。
周囲にいてそれを望む者、望まぬ者たちの野心の軋轢の中でいかに国家民族の自主性を守り保つかという、際どい選択の岐路にさしかかっている隣国に我々は率直な提言を惜しむべきではない。
北は最近の近距離ミサイルの発射を見ても現体制の保持のために核兵器の開発を中止することはあり得まいし、独裁者は保身のために親兄弟、親族をも殺すことをためらわない。
≪対岸の火事ではすまぬ≫
そうした前世紀的と言おうか、遠い古代に近い非歴史的人物が近隣に実在しているという事実は、この現代には異形なことだが、それにおもねってまでわが身を売ろうとしている悪しき指導者をどうやって淘汰するかを真剣に考えなくてはなるまい。
北の独裁者は日本やアメリカにとって厄介な存在だが、南の指導者もまた朝鮮半島を巡る平和と安定のために殆ど役にたたぬ存在の体をなしてきたのは、皮肉というかこれまた厄介な現実だ。
彼の存在をアメリカが殆ど多としていないことは過日の文のアメリカ訪問をワシントンは鼻であしらったと言う現況を文は自覚すべきだろう。
いずれにせよ、朝鮮半島の混乱は対岸の火事ではすまぬ事実で、その現況の火元の文大統領をいかに淘汰するかは、韓国民が己の明日を考えての選択にかかっているのだが。
文大統領が民族の統一を願うのはよく分かるが同じ民族の中に血族の兄を殺し叔父を殺し権力の保持を計る冷酷な指導者と敢(あ)えてでも合体を計り願うと言うのは越権を超えて同胞への背信裏切り以外の何ものでもありはしまい。
世界の安定と平和のために我々が何よりも排除しなくてはならぬのは、北朝鮮の核兵器の前にそれを容認し憧れる盲目に近い南の指導者なのかも知れないが、それを決めるのはあくまで韓国民自身だろう。(いしはら しんたろう)
『2019年6月5日 産経新聞「正論」掲載』