男について
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私はピアスを男がしているのを見ると嫌な気がする
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私はピアスを男がしているのを見ると嫌な気がする。女の装身具を男が身につけているのがなんで男伊達なのか、どうしてあれがマッチョなのかと思う。そういうと息子たちにいかにも古いと笑われるが、生理的な反発はどうしようもない。こんなに華美な時代に男がなおその身を飾りたいならニューギニアの原住民のしているペニスサックでもしたらどうなのだ。
『亡国の徒に問う』(文藝春秋)
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男が「男」であることの条件のひとつは
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男が「男」であることの条件のひとつは、その男が、男としての彼自身のお伽話を、何かひとつ、どんな大それたものでもいい、人に見せても見せなくても、他人に語っても語らなくても、心に収って持っているかどうかということだ。
そして、それをやる意志があるかどうか、ということではないか。
『男の世界』(集英社)
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持つべきものは良き友とか、男の友情は、この世で最も美しきもののひとつ、などというが、それなら実際にそんな友人を持つことの出来た男がざらにいるものだろうか
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持つべきものは良き友とか、男の友情は、この世で最も美しきもののひとつ、などというが、それなら実際にそんな友人を持つことの出来た男がざらにいるものだろうか。
心の友とか真の友情といった言葉は、いかにも膾炙されてはいるが、しかしまた本気でそれを口にすると、どこか気恥ずかしい気がしないでもない。
少なくとも、僅かでもそれをあてにした気持ちで口にすれば、それは乾いた大地に放り出された海月のようにたちまち水気を喪い風化されてしまうだろう。
なんであれ、年中友人を頼りにし、友情をあてにし生きているような男に、一人前の男はいる筈もない。
人間というのは、いかに親しくとも、そう年がら年中意気投合していられるものではないし、特に男の交遊は、親しい女同志のお喋り友だちなどとは違って、趣味的なものにとどまり得ないものだけに、指をからげ手をつなぎ、という形にはなり得ないし、またそんな必要もない。
『バカでスウェルな男たち』(プレジデント社)
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男同士の会話の中で聞く他人の過去の体験は、時として、どんな持ちもの以上にもうらやましく感じられることがある
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男同士の会話の中で聞く他人の過去の体験は、時として、どんな持ちもの以上にもうらやましく感じられることがある。それが、彼の持ちものの何よりも彼自身に似合って見える、というのは実は逆で、その過去が現在の彼を男として造り上げているからだ。
男同士の共感は時として、相手の過去を自分も、類似した形で真似てみたいという衝動を起こさせる。それは決して卑屈な感情ではなし、自分が彼でも、おそらくそうするに違いない、そうする以外にない、という共感のもたらすものだ。
『戦士の羽飾り』(角川書店)
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男と女の違いの一つは、男は孤独に耐えられるが、女にはそれが出来ないということではないか
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一匹狼、という言葉がある。この狼の性別は何か。
一匹狼が、雄であることは間違いない。
雌は絶対に一匹狼にはなれない。特に人間の女は。
男と女の違いの一つは、男は孤独に耐えられるが、女にはそれが出来ないということではないか。
勿論、一人の女はいる。一人で旅をし、一人で生きている女はいる。しかし、一人の女は絶えず誰かを待っている。求めている。それが現実の男でなくても、彼女は必ずそれに代る、彼女にとってはきっと現実性のある幻影を、夢を持っている。
一匹狼、つまり、一人きりの男はそうではない。彼には、自分以外に誰もいない、幻影すらもない、すべてをしめ出した一人きりの世界が必要なのだ。自分が実際に支配しきれる、自分一人が総てを占めることの出来る独りきりの世界こそが、彼の求めるものなのだ。
『男の世界』(集英社)