石原慎太郎の理念・思想

国際関係論

アジア、その関係と歴史の総括

韓国、台湾、シンガポールなど経済がうまくいっている国々は、日本が戦前に統治したことのあるところばかりです

韓国、台湾、シンガポールなど経済がうまくいっている国々は、日本が戦前に統治したことのあるところばかりです。

確かに悪いことをしたことも認めて反省もしなければいけないけれど、いい影響というものを残してきたのも否定できないと思うのです。

『「NO」と言える日本』(光文社)

たとえば半世紀前のあの太平洋戦争にしても、ただ敗れたがゆえに「日本が悪かった」というような短絡的な見方で片付けるだけでは、物事の本質は一向に見えてはこない

たとえば半世紀前のあの太平洋戦争にしても、ただ敗れたがゆえに「日本が悪かった」というような短絡的な見方で片づけるだけでは、物事の本質は一向に見えてはこない。  

太平洋戦争は、日本が仕掛けたものであり、引金を引いて東南アジアへ「侵略」した日本にすべての責任があると、戦勝国の欧米諸国にいまだに言われ続け、多くの日本人がそれをそのまま信じている。さらにその上、その責任に対する反省がまだ足りないとまでいわれてもいる。

しかし、東南アジアの国々がかつての戦争を非難し、日本の再軍国化を危惧してみせる裏の裏のまた裏を読めば、アジアにおけるミリタリー・プレゼンスを維持しておきたいアメリカの戦略の一つの効果であることが見えてくる。にもかかわらず日本人自身が日本人に向かって「もっと反省しよう」「反省が足りない」などと、どこかの国のお先棒をかついだ愚かしいことをやっている。

あの大戦における日本を全面的に肯定しようと言うのでは決してないが、しかし最近ではアメリカの現代史家の多くが、太平洋戦争はアメリカが仕掛けたものであり、日本は"はめられて"戦争に突入したのだという事実認識をしています。当時、伏せられていた公式文書が最近時効で解禁され、それをふまえてのことです。  

『断固「NO」と言える日本』(光文社)

私は何も一〇〇パーセント、大東亜戦争を賛美するつもりはありません。あの戦争の発端は、西欧の列強に伍して軍事国家としての日本を維持することにあったことは確かでしょう

私は何も一〇〇パーセント、大東亜戦争を賛美するつもりはありません。あの戦争の発端は、西欧の列強に伍して軍事国家としての日本を維持することにあったことは確かでしょう。しかし一方で、私は子ども心に、日本人の多くがアジアに対する愛着を持っていることを感じていました。軍歌にある、「東洋平和のためならば、なんで命が惜しかろ」という気持ちですね。それがうまく利用されて、あの戦争の正当化になったということもあるでしょうが、やはり日本人が白人に支配され奴隷化していたアジアの独立を願っていたことは間違いないと思う。

『永遠なれ、日本』(PHP研究所)

日本の左翼の連中が今でもしきりにアジアの人たちにかけた迷惑を反省するのもいいが、もう少し歴史の事実の総量を踏まえてものを言ったらいい

日本の左翼の連中が今でもしきりにアジアの人たちにかけた迷惑を反省するのもいいが、もう少し歴史の事実の総量を踏まえてものを言ったらいい。謝罪、謝罪という言葉の連発に、それを聞かされる側の人々は、かつて欧米宗主国に首根っこを押さえられ「主体的な要因ではなく単に振り回された結果の帰着」として引きずり回されていた過去の自分たちの姿を見いだし、そんな日本人たちがアメリカの占領下での洗脳に晒されたまま、アメリカの家来というか走狗というか、主体のない姿に薄ら寒いものを感じている。

欧米のアジアにおける過去の残虐が、日本のそれとは質、量ともに比較にならないほど酷かったことを彼らは記憶しているから相対的にものが見えもします。

『宣戦布告「NO」と言える日本経済』(光文社)

アジアと日本の関係を考えるとき、いつになってもきまってさきの大戦への謝意の有無が取り沙汰されるのはどうにかならないものだろうか

アジアと日本の関係を考えるとき、いつになってもきまってさきの大戦への謝意の有無が取り沙汰されるのはどうにかならないものだろうか。

たとえばベトナム戦争に敗れたアメリカがベトナムに詫びたとは聞いていないし、かつてオランダのベアトリクス女王が初めて来日したとき過去の戦争について総理がひと言陳謝すべきだなどという声が自民党の中にもあったが、女王が来日の道すがら二百年近く支配収奪し数百人の住民を殺したインドネシアに寄って過去を詫びたという話も聞いたことがない。ドイツは第一次大戦で敗戦国になったが、普通の講和条約を締結し賠償を払い、アルザスとロレーヌをフランスに取られたけれども、加えてしきりに謝罪したか? 第二次大戦後ドイツの首相は世界やヨーロッパにナチスの残虐行為は詫びたが、戦争行為そのものについては謝罪もしていない、例をいちいち挙げたらきりがない。

『かくあれ祖国』(光文社)

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